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【相続特集】相続放棄
Aさんは、個人企業として30年、小さいながら鉄工所を経営していましたが、突然、親会社が不況の波をモロに受けて倒産しました。 Aさんの鉄工所も、販売先は親会社だけでありましたので、耐えられるわけがなく、借金を抱えたまま連鎖倒産しました。悪い事は重なるもので、取引先に迷惑をかけたとの心労がもとで、先月五十三歳で亡くなりました。
Aさんの相続人は奥さんのBさんと、長女のCさんの二人で、残されたBさんは、鉄工所の経営に一切タッチしておらず、経営の内容がどうなっているかまったくわからず、Cさんに手伝ってもらい整理してみると、実に負債は3,000万円もありました。 バブル崩壊後、長年にわたる不況で無理な経営を続けていたので、蓄えもなく資産らしいものは何一つありません。BさんとCさんは、今後、どうして借金を返そうかと寝られない毎日が続いています。
相続の承認及び放棄
相続が発生して、被相続人の財産を調べてみれば、借金の方が多かったというケースはよく聞きます。 民法の規定によれば、相続人は相続開始のときから、被相続人に属した財産上の一切の権利義務を継承することとされています。 ただ、亡くなった人の中には、財産より借金の方が多い人や、いくら借金があるかわからない人もおり、このような場合、相続人がすべてを引き受けるというのも酷であります。このため、一定の手続きのもとに、これらの相続人を救済する制度として、“相続の限定承認”と“相続の放棄”が規定されています。
相続の限定承認
※これは財産や債務の額が不確定な時や、相続時点でたまたま財産の評価額が下がっていて、今後の上昇が見込まれる場合等に有効な方法です。
- 相続により得た財産の限度においてのみ、債務を弁済すべきことを了解して相続の承認をすること。
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- 1. 相続の開始があったことを知った日から3ヶ月以内に行うこと
- 2. 相続人が数人いるときは、全員が共同して行うこと。一部の相続人のみの限定承認は認められません
- 3. 財産目録を作成して被相続人、相続人全員の戸籍謄本と共に「相続の限定承認の申述審判申立書」に添付して被相続人の住所地の家庭裁判所に提出すること
相続放棄
これは、借入金などの負債の額が、明らかに財産より多い場合や、限定承認をしたいけれども相続人の一部の人が反対するためにできない場合等に有効です。
- 相続の放棄とは、はじめから相続人にならなかったことを意思表示することをいいます。
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- 1. 相続の開始があったことを知った日から3ヶ月以内に行うこと
- 2. 被相続人と相続の放棄をする者の戸籍謄本を「相続放棄申述書」に添付して被相続人の住所地の家庭裁判所に提出すること
単純承認
相続人が法定の期限までに限定承認又は放棄をしなかった場合は、単純承認(被相続人の財産・負債の一切を承認すること)したものとみなされます。
なお、次の場合にも単純承認したものとみなされますので注意が必要です。
- 1. 相続人が相続財産の全部又は一部を処分したとき
- 2. 相続人が限定承認又は放棄をした後でも、相続財産を隠匿、消費し又は悪意で財産目録中に記載しなかったとき